ステロイドに関する患者の意識調査-今も同じ

ステロイドに関する患者の意識調査

AD Forumが患者の意識調査を1999年11月から2000年2月にかけて行いました。患者数は530名です。

 ステロイド外用薬を大変怖い20%、やや怖い51%で、71%もの患者が不安を持っていました。

 十分な使い方の説明(回答434人)、薬の副作用の説明(回答425人)があって、納得すれば使う人が55%、できるだけ使いたくない人が38%、絶対使いたくないという人が5%でした(使い方及び副作用説明両者合わせて)。 副作用については、ほとんど説明がなかったという患者が204人と4割に達します。

 という事は、かなりの患者が使いたくないと思っているという事です。勿論、十分な時間をかけて説明され、納得がいけば使ってもよいという患者は55%なので、医師の対応が大切だと言えます。

 久米宏のニュースステーションでのステロイド特集は1992年なので、その影響はあるかもしれません。このことについては後程問題にしたいと思います。

 その後、それらの患者に標準治療で治療したのちの意識調査が2000年8月から2001年1月まで行われました。回答者は530人中284人でした。

 治療について大変満足12%、満足38%、やや不満・不満11.3%と書かれています。残り38.7%はやや満足なのか、どちらでもないのか、回答なしなのかは記載されていません。回答者284人中245人はステロイド外用薬を使用していましたが、ステロイド外用剤への恐れが減った人は63.3%、増えたのは11%、変わらない24.9%。結局36%の患者は治療しているにもかかわらず、恐れを持っているという事です。

ステロイドのどの点が怖いかというと、依存性、副作用、リバウンドが47%を占めました。

今も同じだということです。

以下に原文を載せます。

Kyushu Kyohkai News
K・Kニュース vol.3(2002年12月号)
http://www.allergy-fk.com/kouhou/KK-News/vol-3/page1.htm
~Page1~
アトピー性皮膚炎とステロイド忌避
九州大学大学院医学研究院
皮膚科学 教授 古 江 増 隆
-------------------

1.日常診療の中のステロイド忌避
 皮膚は外界と接して様々な刺激を受けるせいか、皮膚病はなかなか治りません。なかでも難治性皮膚疾患と言えば、アトピー性皮膚炎と即答されるほど、アトピー性皮膚炎は社会的にも有名な疾患となりました。有名になった背景には、ステロイドとアトピー性皮膚炎の問題がマスコミによって過剰に喧伝されたことも大いに関与していると思います。

 筆者の日常診療の中で、「ステロイドは使いたくない」、「ステロイドを使わない治療をしてほしい」という患者さんにいつ頃から遭遇するようになったのか、はっきりとは覚えてはいませんが、1992年頃前後ではなかったかと思います。ちょうどテレビのニュース番組でステロイドはともこわい薬だという報道が行われた頃であったと記憶しています。当時の外来はステロイド外用を拒否して増悪して来院する患者さんが後を立たず、アトピー性皮膚炎の治療におけるステロイド外用の位置づけを患者さん一人一人に延々と説明していました。一人の患者さんに1時間以上をかけて説明しても結局納得してもらえないこともしばしばありました。

2. 不可解なステロイド忌避
 アトピー性皮膚炎の患者さんは近年増加傾向にあり、しかも患者数が増加するにつれて、思春期・成人期アトピー性皮膚炎も増加しています。この増加傾向があたかもステロイド外用の副作用のように喧伝され、患者さんに不幸な誤解を植えつけていった感じがします。報道や風評の恐ろしさをある意味では実感しました。

 一方、診療している皮膚科医の立場から冷静に見ますと、増加してきているのはアトピー性皮膚炎だけでなく、鼻炎や喘息など他のアレルギー疾患も同様に世界的に増加してきています。さらに不思議だったのは、当時すでに喘息や鼻炎の治療ガイドラインでは、ステロイド吸入薬やステロイド点鼻薬がアレルギー性炎症を抑える第一選択薬として取り上げられようとしていました。アトピー疾患群の中で、喘息や鼻炎の治療に占めるステロイドの役割は飛躍的に拡大し認識されてきている一方で、アトピー性皮膚炎でのステロイド外用薬はあたかも悪魔の薬のように取り扱われ始めたわけです。それをいくら説明しても患者さんからは理解してもらえないという体験は、皮膚科診療と社会との関連をいろいろな側面から深く考えるきっかけを与えてくれたと思います。

 ステロイド外用薬は臨床に供さるようになって当時既に40年も経過し、全身性・局所性副作用に比べ有効性がはるかに勝っていることは充分に検討認識された上で処方されていた過程があっただけに、臨床家としては本当にとても不可解でした。

 もちろん、患者さん側から考えると、痒みがしょっちゅう繰り返しなかなか軽快しない、ステロイド外用は有効はあるが塗るのをやめるとすぐに再発する、外用はめんどうでべたべたする、若い世代に多く整容的にもとても気になる、など患者さんの治療への不満は一方ならぬものがあるのも事実です。またアトピー性皮膚炎は乳児に多いので、痒みのために夜中も体を掻いている児をかかえる両親のストレスは本当に大きいと思います。

 ステロイド外用薬は他の難治性の皮膚疾患でもファーストラインの治療薬としてよく処方されています。たとえば乾癬に対するステロイド外用薬の使用頻度はアトピー性皮膚炎と同様ですが、乾癬でステロイド忌避の患者さんはまず経験しません。アトピー性皮膚炎と乾癬のステロイド忌避への態度の違いはどうして起こるのかわかりませんが、アトピー性皮膚炎が強い痒みを伴い、掻くとまた悪化し、また痒みが増すという悪循環に陥りやすいという極めてストレスフルな疾患であることに一部は起因していると思われます。一方、患者の絶対数が多いため社会的な注目を浴び、メディアによる不適切な情報、アトピービジネスによる宣伝があるれていることも大きな原因であると思います。

表1 ステロイド外用薬の怖さについて

表1 ステロイド外用薬の怖さについて
  依存性        87(20.0%)
  副作用        70(18.1%)
  リバウンド 46(10.6%)
  ステロイド抵抗性 35( 8.1%)
  副腎など全身的な副作用 30( 6.9%)
  色素沈着 28( 6.5%)
  皮膚萎縮 26( 6.0%)
  悪 化         20( 4.6%)
  血管拡張 14( 3.2%)
  眼科的副作用 12( 2.8%)
  その他 妊娠・胎児への影響
       なんとなく・皮膚障害
       免疫機能低下や自然治癒の阻害
       あとが残る・脱毛・多毛・貯留
回答総数434件
 
表2 ステロイド外用薬の使用法の説明とステロイド外用薬の受容との関係
          十分な説明有り(113名) 簡単な説明(236名) ほとんど説明(85名)
納得したら使ってもよい   73(64.6%)          131(55.5%)   36(42.4%)
できるだけ使いたくない   36(31.9%)           90(38.1%)   39(45.9%)
絶対使いたくない   3( 2.7%)            8( 3.4%)    9(10.6%)
無回答           1( 0.9%)            7( 3.0%)    1( 1.2%)
表3 ステロイド外用薬の副作用の説明とステロイド外用薬の受容との関係
          十分な説明有り(60名) 簡単な説明(161名) ほとんど説明無し(204名)
納得したら使ってもよい  45(75.0%)           87(54.0%)   101(49.5%)
できるだけ使いたくない   12(20.0%)           65(40.4%)    86(42.2%)
絶対使いたくない    1( 1.7%)            6( 3.7%)    13( 6.4%)
無回答           2( 3.3%)            3( 1.8%)     4( 2.0%)

3. 患者の意識調査
 AD Forum という研究会による1999年11月~2000年2月の患者の意識調査(530名)では、ステロイド外用薬を大変怖いと考えているもの20%、やや怖いと考えているもの51%でした。またステロイド外用薬のどこが怖いかという問いについては、依存性20%、副作用18.1%、リバウンド10.6%などですが、なかには医学的根拠のない事柄に対する怖さを訴えている回答もありました(表1)。ステロイド外用薬の副作用や怖さの情報原はマスコミ50%、医師19.9%、他の患者6.7%でした。このように実際に生じうる皮膚萎縮や血管拡張への怖さは案外低く、依存性や副作用など漠然とした怖さが主体となっているようです。さてステロイド外用薬を処方した医師による使用法の説明については、十分な説明があった25.5%、簡単な説明があった53.2%でした。

 医師による使用法の説明が十分であるほど、納得したらステロイド外用薬を使ってもよいという意識が患者さんに芽生えることが表2から推察されます。次に処方した医師による副作用についての説明については、十分な説明があった13.5%、簡単な説明があった36.3%であり、患者さんは副作用についての説明が使用法についての説明に比べて少ないと受け止めていることがわかります。しかも副作用の説明を十分受けたと感じている患者さんでは納得したら使ってもよいと回答しているものは75%にのぼり、副作用の説明を十分に行い患者さんに納得してもらうことがとても大切であるといえます(表3)。

4. 標準治療後の患者意識調査の推移

 さてこの頃に厚生労働省研究班ならびに日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎治療ガイドラインが相次いで発表され、アトピー性皮膚炎の標準治療を患者さんに啓蒙していこうという学会の動きが活発化しました。その活動を受けて、前項に述べた患者さんに標準治療でフォローした後の意識調査が2000年8月~2001年1月まで行われました。530名の患者さんのうち回答が得られたのは284名でした。

 このうち治療についての満足度は大変満足12%、満足38%で、やや不満・不満は11.3%でした。回答者284名のうち245名はステロイド外用薬を使用していましたが、ステロイド外用薬への怖れが減ったのは63.3%、増えたのは11%でした(表4)。怖れが減った理由は、医師の説明で納得できた、使用しても安全であった、が大半を占めました。このことは、診察時での医師の説明も重要ですが、患者さんの気持を楽にさせる方法(まず治療を始めてみてその中で副作用がでるようだったら、そこで立ち止り考えてもなんら遅くはないので、まず始めてみましょうというサポート型)でスタートし、患者さん自身が安全であることを体験するという手法も重要であるということが分かります(表4)。これらの治療でアトピー性皮膚炎によるストレスの程度の推移をみてみますと、63.8%は軽減していることがわかりました。やはり医師と患者のよりよいパートナーシップの構築が診療の質の向上につながるようです。

表4 外用薬を使用した患者のステロイド外用薬への恐れ(回答数245名)
恐れが減った 155(63.3%)
変わらない   61(24.9%)
恐れが増えた 27(11.0%)
無 回 答         2( 0.8%)
________________________________________
恐れが減った理由(複数回答167件)
医師の説明で納得できた 89(53.3%)
使用しても安全であった 69(41.3%)
改 善 し た         5( 3.0%)
そ の 他               4( 2.4%)
________________________________________
恐れが増えた理由(複数回答28件)
副作用を経験した 15(53.6%)
説明がない 4(14.3%)
医師の説明でかえって怖くなった 3(10.7%)
医師の説明で納得できなかった 3(10.7%)
そ の 他 3(10.7%)
プロフィール

佐藤美津子

Author:佐藤美津子
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赤ちゃんや子どものアトピー・乳児湿疹にステロイドを使わない治療をしています。連れ合いと共に広めていきたいと思います。
出身は和歌山、梅で知られているみなべ町。大学入学後、大阪に移り住みもうすっかり大阪人。

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